[中高年の「元気が出るページ」 No.205 2008/07/04]
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「爽やかエッセイ」
「ごぞんじですか? 検察審査会」
堤久代
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<ごぞんじですか?検察審査会> リーフレットと共に<検察審査員候補者に選ばれたことについて>と記された通知書が、伊勢崎市選挙管理委員会から届いた。暮れも押し詰まった昨年のことである。
自慢ではないが、初めて目にする審査会の存在であった。管轄区域ごとに選ばれた四〇〇人が、任期ごと四つのグループに分けられ、クジで選ばれると書いてある。決められる審査員は補充員を含めて十一人。クジにあたるはずもない。ほっておいた。
選管から二度目の通知が届いたのは、年明けまもなくで、三十八人を選んだクジにあたったという。
六ヶ月の任期とはいえ、一日がかりの審査会議が、月に一、二回開かれ、前橋の裁判所まで行かねばならない。裁判、法律などまったく無縁の六十数年を送ってきた。家業のパン屋はまだまだ辞められない現状で、終日働いている。体力、能力の減退は哀しいほどだ。
が、「決まった」ということではないし、受けられない人は云々の問い合わせでもない。断る、辞退を申し出ることでもあるまい。
それにしても・・・。これって今話題の民間裁判員とは違うようだが、裁判員制度の予行演習でもあるのだろうか。
三度目の通知は前橋検察審査会からであった。<あなたは当検察審査会の平成十九年度一群の検察審査員に選定されました>という事務局長の署名捺印された「選定通知書」である。「招集状」もいっしょだ。それも、<正当な理由がないのにこの招集に応じないときは、過料の処分を受けることがあります>の一行がある。しばらく机上に置いたままのA4判の封書であった。
二月の初め、馴染みのない前橋地方裁判所の受付で、四階にある事務局を教えてもらい、恐る恐るドアを開ける。
「おめでとうございます。クジにご当選ですね」
満面笑みで、やさしいお父さん風職員の一声である。四十歳中ごろだろうか、全体にウエーブのかかった髪、淡い色柄のセーター、襟元は第一ボタンのはずされたワイシャツ。職員のいでたちは、久々の緊張感に、深呼吸して入室した私を、瞬時にいつものパン屋のおばさんに戻した。
正面の机にいたスーツ姿の人が立ち上がり、
「ご苦労様です。どうぞ、どうぞ」
目を細め、腰をおりながら、椅子を勧めてくれた。この時点で私の心は萎えてしまったのかもしれない。
実は・・・。私、憤慨した勢いで、訪ねてしまったのだ。いくらクジで選ばれたとはいえ、勝手すぎる。意見、都合など一度も聞いてこず、いきなり「決まった、会議に来い、来ないと罰金」はないだろう。かといって、無視、行かない、というのは性分で出来ない。
職員は終始にこやかに、「そうです。ごもっともです」と、相槌をうちながら、私の言い分を聞いていた。人の話はこう聞くものか、と気づかされるほど、好意的な対応であった。
<公訴権の実行に関し民意を反映せしめてその適正を図るため>置かなければならない審査会であり、<検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項>を掌るのが役目の一つであることなどから、詳細に渡っても、私の質問に答えてくれた。
「聞いたこともなくて、何も知らなかったのですが、いつごろからあるんですか」
「いやー、私はまだ生まれてなくて知らないのですが、昭和二十三年に公布された法律なんです」
「えっ、そんなに前から。私生まれていましたけど、知りませんでしたよ」
なんだか興味津々、ワクワク気分で、帰路のハンドルを握った私だった。
自費出版図書館同人誌「黎明」より転載
次回は神出杉雄さんの「大人のなぞなぞ遊び」(3)をお送りする予定です。
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