[子育て羅針盤 第404号 2008/06/30]
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[2008/06/30]
【子 育 て 羅 針 盤】
(第404号)
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★子育て12指針★
【子どもに生活をさせていますか?】
《V31:MATOME》
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《子育ち第0指針》
〜素直に育ちたい〜
経験したことのないことはできません。育ちのためには多様な経験を積まな
ければなりません。本を読むことで疑似体験をすることはできますが,それも
似たような実体験があってはじめて実を結びます。多様な体験とは,生活の中
にこそ埋まっています。生活体験が豊かに育つことで,子どもの身の丈にあっ
た経験が基盤として備わっていきます。土台がしっかりした育ち,大きくなっ
ても揺るがない着実な育ちは,生活から生まれます。
兄弟がいました。ある日のこと,お兄ちゃんが遊びに行っていた友だちの家
からケーキを1個頂いて帰ってきました。母親が「弟に分けてあげなさい」と
言ったので,兄弟は半分にしたケーキを一緒に仲良く食べていました。
ほほえましい光景を眺めていた父親が,尋ねました。「お母さんがケーキを
二人で分けて食べるように言ったね?」,「ウン」。「お母さんはどうしてそ
んなことを言ったのだろうね?」。兄弟はケーキを食べる手を止めて,お父さ
んは何を言いだしたのだろうと顔を見合わせました。
やがて,さすがにお兄ちゃんらしく自分が答えなくては思ったのでしょう,
こんな返事をしました。「ボクが一人で食べると,弟が可哀想だから」。学校
で道徳の時間に,相手を思いやることを学んでいました。弟も食べたいと思う
はずだから,自分だけ食べたら,弟はきっと泣くだろうと考えたのです。弟思
いの優しいお兄ちゃんらしい答えです。
弟はお兄ちゃんが答えたから自分も何か答えなくてはと,しばらく考え込ん
でいました。可哀想と思われたことが少し嫌でした。お兄ちゃんに負けたくな
いと背伸びしている腕白な弟です。父親はじっと待っていました。やっとお兄
ちゃんと違った答えを見つけたのでしょう,弟が答えました。「今度ボクがケ
ーキをもらったときに,必ずお返しをすればいいから」。
貰った立場にある弟は,借りができたことになります。世間の暮らしではモ
ノを頂いたらお返しをすることでトントンになるということを,日頃の母親の
行動から知っていたのです。幼い弟らしく,ケーキにはケーキを返すという約
束をしたと受け止めたわけです。
ニコニコと二人の答えをうなずきながら聞いていた父親は,二人の成長を喜
んでいました。でも,胸の中では少しばかり気になることがありました。質問
をした以上,父親なりの答えがありました。兄弟の答えは,その答えにまだ届
いていなかったのです。無理もないことですが,二人に教えておくよい機会だ
と考えて,こんな質問をしたのです。父親の答えはどんなものだったのでしょ
うか?
弟が可哀想だから分けてあげる。その思いやりにはちょっとした副作用があ
ります。分けてやった方は「ありがとう」というお礼の一言ぐらい言って欲し
いという気持ちを,分けて貰った方はお礼を強要されるような気持ちの負担を
感じることがあります。もしも弟が黙ってケーキを食べたら,お礼も言わない
奴にはもう二度と分けてやらないということになります。
いつか必ずお返しをする。その暗黙の約束は,すぐには実現できません。早
くお返しをしないと,その後ことある毎にいろんなことで「この前,ケーキを
やっただろう」と恩に着せられることもあり得ます。お兄ちゃんにその気はな
くても,貰った方にそんな後ろめたさが湧いてくるものです。ケーキ半分を借
りたという負担は,気持ちの負担になってのしかかってくるようになります。
でも,父親は子どもの答えを受け止めて,それに反論することはしませんで
した。反論されることは子どもが最も嫌うことだからです。子どもの答えもあ
るということを認めてやっておかなければ,防御態勢に入って父親の答えを聞
く耳を持たなくなるからです。別の答えもあるということを教えてやることが
親の説得の基本です。
父親は兄弟に話しました。「お母さんがケーキを分けて食べるように言った
のは,一つしかないケーキを兄弟で分けて食べた方が美味しいと思える子ども
になって欲しいからだよ」。
分けてあげる,お返しをするという兄弟の答えは,生きていくテクニックと
して大事なことです。親によるしつけはそのことに関わります。それは大事な
のですが,家族として生きていくことで生きる喜びを感じて欲しいというのが,
親の願いなのです。した方がいい,しなければならないということだけではな
く,したいという喜びを持って生きていって欲しいのです。
兄弟がケーキを美味しいねとうなずき合いながら食べている様子を見て,父
親はニコニコしています。お兄ちゃんが貰ってきたケーキですが,そのような
ことはどうでもよくって,楽しいひとときを過ごせたらそれで十分な兄弟,仲
の良さを見守っている親もうれしいことでしょう。
・・・《素直な気持ちは家庭生活の中で育まれます》
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☆次号予告☆
【子どもの先回りをするのはやめましょう】
どうぞお楽しみに!
親が何を願っているのか,子どもはついていくことで分かっていきます。親
自身の願いを子どもとの生活の中で共に目指していく,それが親の子どもへの
願いになればいいのです。最近は,親は親,子どもは子どもという意識が強す
ぎるようです。それでは,人としての育ちを疎かにしていることになります。
職業的には違った道を進むことになるかもしれませんが,人の幸せに向かう道
は同じはずです。親の幸せを背中ににじませておいてください。子どもはちゃ
んと見てくれていますから。
枝があればぶら下がってみたくなります。穴があれば覗いてみたくなります。
鳥が歩いていると追っかけてみたくなります。水たまりがあると棒で突いてみ
たくなります。影法師を踏んでみたくなります。無邪気な戯れですが,その他
愛のない一つひとつが,この世界を知る手がかりになります。現場検証で手に
入れた材料が多ければ多いほど,子どもの世界観は正確になります。いつまで
くだらないことをしているの! その制止は育ちの邪魔です。(以下次号)
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★落書き★
下校時間の見守りをしているときです。子どもたちが水路の方に何かを見に
道を離れています。近所の大人もそちらを眺めながら,何か言っています。遠
くなので事情は分かりません。下校も終わりかけたので見守り仲間がそこに集
まっていきました。6名の子どもが水路に落ちた犬の周りにいました。一人の
子どもは水路の中に入って抱えようとしていますが,自分と同じ背丈ほどの大
きな犬ですので無理でした。大人たちは噛みつかれるから止めなさいと言って,
誰も手を貸そうとしません。
そばに行くと犬が岸に前足をかけて子どもたちを見回しています。両前足を
背中の方から抱えるようにして引き上げてやりました。「ありがとうございま
した」。子どもたちの声がする中,犬は周りにいる人の間をはしゃぎ回ってい
ます。ぬれた靴を手に持って裸足で帰る子どもに,「ありがとうね」と言って
見送りました。これも見守りです。
この号で第31版は結びとなります。次号からは第32版に入ります。親は
子育てをしようとします。ところが,その手法が作る手法になっていて,育て
る手法になっていません。親子で歩いているとき,子どもが小走りになってい
る姿を見かけます。子どもの歩くペースを超えているからです。育ちを急かさ
れても,子どもはついて行けません。その辺りの注意点をテーマにお伝えしよ
うと思っています。
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