[西洋思想の散歩道 No.145 2006/02/25]
◆◇◆「思想の世界」Vol.2◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
No.145 2006.02.25
西洋思想の散歩道
-A Promenade of Western Thought-
K. Wiseman 著
Assisted by Mai O.
◆◇Presented by K`s Community◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
読者の皆さんへ:
ずいぶん久しぶりのメルマガになってしまいました。昨年は大きな地震、
今年は異常な積雪で始まった2006年の如月も、もう終わろうとしています。
お変わりありませんか。
年末年始で、今年はことのほか忙しく、また、1月末からインフルエンザ
にかかり、数年ぶりで寝込んだりして、とうとう、メルマガの発行ができま
せんでした。お待ちいただいている方の中には、もう止めてしまったのでは
ないかと案じておられる方もあったかもしれませんが、「徒然の散歩」とご
容赦いただければ幸いです。インフルエンザもようやく治り、こちらでは梅
の便りも聞かれ始めました。
僕は梅の花が大好きで、昨年購入しました我が家のしだれ梅も、いくつか
花をつけてくれています。越冬してくれたことをとても喜んでいます。3月
末には転居するのですが、これはもっていこうと思っています。
ところで、某新聞の朝刊がずっと「分裂の時代」という特集を組んでいま
すが、21世紀は「分裂と対立の時代」になってしまった感がありますね。
20世紀末に東西の冷戦が終結し、ベルリンの壁が打ち破られて、和解と平和
の時代が訪れることを期待しましたが、民族戦争、テロ、報復戦争に始まり、
中東では新たに「壁」がうち立てられ、世界は「対立の構造」の中で動いて
きましたし、国内では「貧富の格差」が大きくなって、社会的階層の分断が
進んでしまいました。
養老孟司氏の『バカの壁』ではありませんが、人と人とを隔てる壁がますま
す大きくなって、「和解の道」が見えなくなっているような気がします。
そういう中で、先日のトリノでの冬季オリンピックのTV放送を見ていま
す時、トリノ近郊の小さな村の紹介が映像で流されたのですが、石を積み重
ねて作った家や道、村で共有している泉、質素で素朴な生活、愛情あふれる
落ち着いた温かい人々などを見ていて、ふと、以前訪れましたイタリヤのア
シジのことを思い出しました。
僕はアシジ村で地元の子どもたちの一団と偶然出会い、しばらく一緒に遊
んだのですが、どの子も、落ち着いて、素敵な笑顔を振りまいて、本当にゆ
っくりと生活をしていたのです。何もないけれども、とても豊かな人柄の子
どもたちでした。
私たちの日本の社会は、いつから、どうしてこんなに浮ついた社会になっ
てしまったのだろう、と思います。社会や暮らしの落ち着き方が全然違うの
です。様々な知識を駆使して分析してみても、特効薬はありませんでした。
だから、すべてにおいて、じっくりと落ち着いて暮らしていくことしかない
のかも知れません。
3月〜4月にかけて、また、慌ただしい日々になりがちですが、「落ち着
いて暮らす」ということを改めて考えています。そこから、「隔ての壁」も
できるだけ薄くなるように思えるのです。
では、今号は「考えること・思考の科学」の(4)です。
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第5章 知識と言語
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1.考えること・思考の科学(4)
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唯物的世界観をもち、「人生をいかに楽しく生きるか」ということについて
の処世術を説いたエピクロスは、人間の生の目的を「快楽」においたことから
も解るとおり、物事を考える基準に「感覚」を置きました。「自分の感覚を信
頼しなければならない」というのが、彼の主張でした。
あらゆる認識は感覚を通してもたらされます。しかし、もし、その感覚を間違
って解釈したり、判断を間違えると、誤りを犯し、真の認識がえられないので
すから、自分の感覚を正しく働かせることに充分注意しなければならない、と
考えました。
エピクロスは紀元前3世紀の人で、人間のすべての行動の目標は快楽である、
と主張し、快楽の判断基準として「感覚」を置いたのです。しかし、この快楽
の結果を予測して、を破滅ではなく自ら高めるような快楽を求めなければなら
ないし、精神的快楽の方が肉体的快楽よりも遥かに優れていると述べています。
このエピクロスの主張は、極めて古くて新しい考え方であり、たとえば、善
悪の倫理基準が相対化されてしまった現代においても、功利主義や実用主義、
あるいは、状況倫理といった考え方の根本にあるのは「快の追求」に他なりま
せん。「幸福」は「快」であり、善悪の基準は「快−不快」にあるというのが、
現代人の大まかな感覚です。
現代人は、科学的知識の進歩によって理性的であると同時に、「快」を人生の
基準におく快楽主義者でもあるのです。
知り、考えることの基礎となるものは感覚を通して与えられるという、この
エピクロスの主張は、経験主義的であり、現実主義的な刹那感をもっていたス
トア派の人々も同じように考えました。
ストア派の人々は、人間の魂は、生まれた時には何も書かれていない白紙の
状態であり、その後、事物から印象を受け取り、その印象が持続して記憶され
るイメージとなり、そのイメージからイデアが創られると考えました。そして、
人間の精神とは、受け取った印象を一般的イデアへと組織化する働きであると
考えたのです。認識は感覚的な印象に由来し、印象の組織化によってもたらさ
れると言うのです。
人間の精神は「感覚」という窓を通して世界を見渡し、感覚は外界の刺激を受
けて、経験を精神の上に印象づけ、次々とそれをイデア化するのだから、イデ
アに相当するものは現実に存在するものである、というのが彼らの存在論でし
た。つまり、あるから感じるのではなく、感じるものがある、のです。
社会的地位や身分ということからすれば、多くの場合、寄留民として常に生
き抜くことを強いられていたストア派の人々が、処世術(How to)を駆使し、
現実主義的に経験と感覚を基本にして物事を考えざるをえなかったことは、わ
かるような気もします。
思考の基礎を理性におくか感覚におくかは、経験がイデアを生むのか、それ
ともイデアが経験を生むのか、ということでもあり、その後長く哲学の二大見
解として問題にされてきたものですが、「ニワトリとたまご」の論争に似たも
のの感があります。
この問題は中世の哲学における唯名論と実在論の対立でもありました。実在
論者は、プラトンのイデア論をさらに推し進めて、イデアは一般的な概念や経
験、事物から完全に独立した普遍的存在であるし、実在する、と主張しました
が、唯名論者は、イデアは経験の結果であり、固有の経験から生み出されるも
のであると主張したのです。
そして、この問題を神学的に決着づけたのがアウグスティヌスでした。アウ
グスティヌスは、経験からえられる一般のイデアと神から与えられる啓示を区
別することによって、経験主義と理性主義を両立させ、さらに、神的な信仰の
領域を確立したのです。
人間は、まわりの世界については感覚や経験やその他のもので認識することが
できるし、その認識に応じて行動することができるので、日常生活の必要性に
対しては、その認識で充分である、と彼は言います。しかし、より高度な認識
がもうひとつあり、自然を経験することからでも自然(経験世界)からもたら
されるのでもなく、神の啓示として信仰によってもたらされる啓示の認識があ
る、と考えたのです。
このアウグスティヌスの認識論は、プラトンの「究極のイデア」からの認識
を神の啓示という姿で示し、経験によって自然世界からもたらされる認識の限
界を示すものでした。この姿勢は、やがて、カントが『純粋理性批判』によっ
て示した認識の限界と呼応していくものですが、それ以前に、中世キリスト教
神学と哲学では、護教的に働き、神に関するすべての教えを守るものとして用
いられました。
中世キリスト教は、この論によって、神に関する思考を停止させてしまいま
したし、あらゆる反論を封じてしまったのです。
次回このことを少し見てみましょう。
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☆早いもので、こちらでは、もう、大好きな梅のつぼみが大きく膨らんでいま
すし、2〜3輪の花が咲き始めました。春遠からじ、です。しかし、北風も
まだ頑張っています。
☆転居の準備もしなければならないのですが、予定日までスケジュールがつま
り、書類一つ整理できない日々になってしまいました。肉体勝負の感があり
ますし、冬季オリンピックにはまってしまいましたので、いやはや、という
ところです。
☆元々、この時季は、僕は冬眠の季節で、身体がうまく機能しないことを感じ
ることが多いのですが、「眠いなぁ」と思いつつ日々の暮らしに精を出して
いるような次第です。
☆まだまだ寒い日が続きます。健康に留意してお過ごしください。
では、また。
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