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第87号 2008/05/12 04:06:26 発行
 
【PUBLICITY】1741:「俺達の味方」考
 
 
 
■■メールマガジン「PUBLICITY」No.1741 2008/05/12月■■


▼「プロレタリア文学を代表する小林多喜二(1903〜19
33)の「蟹工船・党生活者」(新潮文庫)が、今年に入って
“古典”としては異例の2万7000部を増刷、例年の5倍の
勢いで売れている」(読売新聞 - 05月02日 15:13)そうだ。

「不敬罪」で、獄中で虐殺された小林多喜二の小説が売れるの
は結構なことだ。『蟹工船』には、将来を考える余裕すら奪わ
れた労働者(と呼んでいいのかどうかもわからない地獄に生き
る男たち)の切迫感が見事に表現されている。

ワーキング・プアの生活感情は激しく共振するだろう。虐げら
れている人、苦しんでいる人、悩んでいる人が手に取り、共感
する、そこに多喜二の意図もあろう。しかし、『蟹工船』の社
会的問題意識はそこだけにはない。

▼『蟹工船』は、帝国に見捨てられた労働者たちが、生きても
地獄、【死んだ後も地獄】の蟹工船の中で、「集団」となって
、やむにやまれぬ「闘争」を開始する物語である。

サボタージュとストライキの失敗を通して、
「俺達には、俺達しか味方が無(ね)えんだ」
と自覚する、労働者たちの成長の物語である。

「個人」では「組織」に太刀打ちできない。「てんでんばらば
らのもの等を集めることが、雇うものにとって、この上なく都
合のいいこと」だ。『蟹工船』は、生き延びるためにはどうし
ても労働者自身の「集団」が必要であると気づく物語である。

▼その先には何が待っているか。その先には、素朴な動機から
起こした「闘争」が待っている。そして闘争のためにつくられ
た集団が組織化され、同時に宿命づけられた「腐敗と硬直」が
待っている。──つまり、帝国から見捨てられた個人が、闘争
のために参入した組織からも見捨てられる、「二重の差別」が
待っている。

多喜二は、ニッポン社会で展開されたそれらの悲惨を隅々まで
見ることなく、殺されてしまった。

数十年の間、この社会の呼び名であった「戦後民主主義」とい
う言葉の効用/昂揚は、個人の幸福を守るための闘争から生じ
た、腐敗と差別の経緯が忘れ去られるとともに、失われたのか
も知れない。

▼だとすれば、自分たちの「社会の歴史」を忘却する過程は、
社会の貧困化(格差化ではない)の過程と関係しているのか、
していないのか。関係しているとすれば、どのように。

文学の読まれ方の傾向には、自ずからその社会の性格が映し出
されるだろう。闘争の道具か個人の精神的満足か保身の隠れ蓑
か。『蟹工船』は、社会の公共性を問う文学である。どういう
「戦の旗」を掲げるかを問う。問われる社会人の方は無自覚で
も。

「帝国主義」の戦争がどんな「経済基盤」に拠って行われるの
か、この一点を多喜二は撃とうとした。だから、「生活の感情
」の線とは異なる次元のもう一本の線、「生活の論理」の線が
必要だった。使える道具はマルクス主義しかなかった。

この二本の線のうち「生活の感情」を肥大化させる読み方、
「生活の論理」を無視する読み方は、うまくねえだろうナ。

▼今、使われる意匠は様々に変わっても、解くべき構図はあま
り変わっていない。ただし多喜二の敵は「国」だったが、いま
『蟹工船』を読む人の敵は必ずしも「国」ではない。敵は「法
人」であり、剥き出しの「資本主義」そのものかも知れない。

今、「生活の感情」と「生活の論理」という日本の、もとい、
二本の線を太くひこうとしている人はいるか。いるだろう。ど
こに? 視野の狭いぼくには、なかなか見当たらないが、地道
に「労働組合」で闘う人々の中にはいるだろうね。

『蟹工船』を読むなら、個人的には、当時どういう拷問が行わ
れていたかを描いた『一九二八・三・一五』が収録されている
岩波文庫版がオススメだが、『党生活者』を併録した新潮文庫
版が売れるんだねえ。安いし。

▼「現代の蟹工船」が描かれるとすれば「集団」を主人公には
しにくいだろう。「個人」を主人公にすれば。それも難しい。
難しいけど、生活と論理とが交錯するのは、常に個人と集団だ。

様々な蟹工船の中で「俺達」とすら言えないところに現代の悲
惨があるとすれば、あり得るのは、「俺」を主人公にした、「
俺達」を探す旅か。じゃあ、取り敢えずお手本は「北方水滸伝
」か? 「俺達しか俺達の味方が無(ね)え」んなら、その俺
達の数を増やすしかないじゃん、っていう。それこそ、「先き
の成算なんて、どうでもいいんだ」っていう。

あっ、ジャニタレが主人公で、どこかのユニオンを舞台にした
ドラマをつくればいいじゃん! いや、そんなのつくると、ジ
ャニーズ自体がつぶれるからダメだナ。うーん、如何にも本誌
的な、まとまりのない結論でした(結論になってねえよ!)。


freespeech21@yahoo.co.jp
http://www.emaga.com/info/7777.html
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アンケート結果



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