[スクリーンに見つけた恋愛風景 No.61 2008/07/07]
スクリーンにはさまざまな恋愛風景が描かれています。熱く燃え上がるような恋
もあれば、相手を包み込むような深い愛もあります。このメルマガでは、実際の
セリフを織りまぜながら、映画の中の恋愛風景を紹介していきます。
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Scene 61 「知りすぎた愛、知らなすぎた愛」
【 理想の女(ひと) 】
A Good Woman
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いつも「スクリーンに見つけた恋愛風景」をご愛読いただき、
ありがとうございます。
今回は事情により配送が遅れ、ご迷惑をおかけしました。
第61号の今回は、2004年製作、翌年日本公開の【理想の女(ひと)】を採り上げ
ます。恋愛の酸いも甘いも噛み分けた女性と、無垢な愛しか知らない女性。幸せ
を掴むのははたしてどちら? 男女の愛とともに、親子の情愛も感じられる作品
です。
−−◇◆ 目 次 ◆◇−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1. 基本情報
2. 見どころ
3. 「知りすぎた愛、知らなすぎた愛」の分析
4. ヒロインのセリフから
5. 裏話
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1. 基本情報
■主な出演: (★=男優/☆=女優)
☆スカーレット・ヨハンソン ・・・ ☆メグ・ウィンダミア
☆ヘレン・ハント ・・・ ☆ステラ・アーリン
(アーリン夫人)
★トム・ウィルキンソン ・・・ ★タピィ
★マーク・アンバース ・・・ ★ロバート・ウィンダミア
★スティーヴン・キャンベル・ムーア ・・・ ★ジョン・ダーリントン
■監督:
マイク・バーカー
■ストーリー:
1930年の夏。イタリアのリゾート地アマルフィには、世界中からセレブが集まっ
てきていました。その中には、若きアメリカ人実業家ロバート・ウィンダミアと
新婚の妻メグもいました。社交界にデビューしたばかりのメグは、初々しい輝き
を放っています。夫婦仲も良好でした。
ある日ロバートは、メグの21歳の誕生日に贈るプレゼントを探して宝石店を訪れ
ていました。そこへアーリン夫人が近づいてきます。妖しい魅力を漂わせる中年
女性のアーリン夫人は、数々の男性と浮名を流し世の妻たちの憎まれ役となって
いました。彼女はロバートに扇子を選ぶようアドバイスします。アーリン夫人に
惹かれるものを感じたロバートは、アドバイスに従い扇子を購入するのでした。
それからロバートは、たびたびアーリン夫人の元を訪れるようになります。やが
て2人の仲は、セレブたちの噂に上るようになります。ロバートの友人ジョンは、
ひと目会ったその日からメグに恋をしアプローチを続けていました。彼は噂に乗
じてメグを略奪しようと考え、行動を起こすのでした。
夫の不倫を知ったメグは激しいショックを受けます。誕生日パーティで、アーリ
ン夫人と同じデザインの露出度の高いドレスをまとい、夫を挑発します。ロバー
トは誤解を解こうとしますがメグは聞く耳を持たず、ジョンとの駆け落ちまで決
意してしまうのでした。
それを知ったアーリン夫人は、メグを追いかけます。そして・・・
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2. 見どころ
【理想の女(ひと)】は、イギリス・スペイン・イタリア・アメリカ・ルクセン
ブルクの5カ国による合作映画です。1930年の夏、南イタリアの高級リゾート地・
アマルフィを舞台に、この地に集うセレブたちの日常を描いた軽妙洒脱な作品で
す。
アマルフィ海岸は世界遺産にも登録されている景勝地で、白い瀟洒な建物が眩し
い太陽によく映えています。1930年という時代を反映したセレブ御用達のレトロ
なショップが建ち並びます。登場する老若男女さまざまなセレブたちは、華やか
なファッションで私たちの目を楽しませてくれます。女性たちの優雅なドレス姿
はもちろんのこと、男性陣のダンディなスーツファッションにもご注目くださ
い。
本作は、19世紀アイルランドの作家オスカー・ワイルドによる「ウィンダミア卿
夫人の扇」をベースにしています。キラリと光るセリフの数々は、原作から踏襲
されているのでしょう。
暇を持て余したセレブたちの口からは、噂話ばかりでなく人生訓も飛び出しま
す。たとえば、「陰口が耳に入ったらこの世に友達はいない」「いろいろ知りす
ぎると不幸になる」「人は愛を語るけど誰も見た人はいない」「聖人に過去あ
り。罪人に未来あり」等々。なかなか奥が深いです・・・
本作のヒロインは2人。若いメグを演じたのは、スカーレット・ヨハンソン。当メ
ルマガ初登場です。今最も注目を浴びている女優の1人で、つい最近俳優ライアン
・レイノルズと結婚したばかりです。日本人にも親近感の湧く小柄であどけない
顔と、抜群のプロポーション。パーティのシーンで彼女がまとう、胸元が大胆に
開いたゴールドのドレスには思わずドキッとさせられるでしょう。一方、30年代
の上流夫人らしく、白地に赤い水玉模様をあしらった清楚なワンピース姿などに
は、十分な気品が感じられます。
もう1人のヒロインは、ヘレン・ハント。当メルマガでは、第11号【キャスト・ア
ウェイ】に続き2度目の登場です。1997年に【恋愛小説家】でアカデミー主演女優
賞を獲得した中堅女優です。本作では、女性から嫌われるアーリン夫人を演じま
す。“夫人”といっても独身なのですが。セレブ男性たちの援助を受けて生計を
たてている彼女は、とても悲しい女性です。そんな悲哀が妖艶な美しさの中に存
分に感じられます。ヘレン・ハントは、脚本段階から企画に参加して役作りを進
めたといいます。
また、アーリン夫人に恋する富裕な中年男性タピィは、トム・ウィルキンソンが
演じています。当メルマガ第35号【恋におちたシェイクスピア】では、冷酷なの
か人情家なのかわからない借金取りを演じましたが、本作のタピィはまぎれもな
い紳士です。味わい深い彼の演技が、作品をグッと引き締めています。
ネタバレというお叱りを受けるかもしれませんが、本作は親子の情愛が大きな
テーマになっています。メグはアーリン夫人の実の娘なのです。20年前に捨てた
わが子への愛情が、鮮明に描かれています。感動は波のように何度かやって来ま
す。最後の最後まで、スクリーンから目を離さないでくださいね。
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3. 「知りすぎた愛、知らなすぎた愛」の分析
1930年のニューヨーク。美貌の中年女性ステラ・アーリン夫人は、長年にわた
り社交界のさまざまな男性と交際し、生活の面倒を見てもらってきました。しか
し妻たちからは憎まれ、銀行口座をことごとく閉鎖されてしまいます。
万策尽きたアーリン夫人は最後の手段に出ることにし、セレブが集まる夏のイタ
リア・アマルフィに向かいます。彼女が手にした雑誌には、ウィンダミア夫妻の
仲睦まじい写真が掲載されていました。
アマルフィに着いたアーリン夫人は、ある宝石店で1人の紳士に出会います。彼は
ロバート・ウィンダミア。もうすぐ21歳の誕生日を迎える新妻メグへのプレゼン
トを探しに来ていたのです。
目が合い微笑む2人。アーリン夫人はロバートに、クラシカルな扇子を勧めます。
『扇子は男性の心をかき乱すのよ』と。ロバートはアーリン夫人に惹かれるもの
を感じ、その扇子を購入するのでした。(後日、扇子をプレゼントされたメグは
とても喜びます。)
店を出た2人がどこへ行ったのかは、映画には描かれていません。おそらくアーリ
ン夫人の滞在するホテルへ向かったのでしょう。そして、ロバートは驚愕の事実
を知らされます。アーリン夫人がメグの実の母親であるということを。
20年前、アーリン夫人は夫と乳飲み子を捨てて男性と駆け落ちしました。しか
し、その恋はすぐに破綻。その後、何人もの男性と浮き名を流しました。社交界
から締め出され生活に困った今、メグの母親であることを盾にロバートにお金の
無心をします。ロバートも、この女性がメグの母親だと世間に知られることを恐
れます。しかし、それ以上に怖かったのは、母親を優しい天使のような女性だっ
たと信じている妻を傷つけることだったのです。
ロバートはアーリン夫人に小切手を切り、貸別荘を手配します。メグに知られた
くない一心で、その後もアーリン夫人にお金を渡し続けるのでした。
アーリン夫人のゴシップは、アマルフィにも広がります。今度はどんな男性に面
倒を見てもらっているのかと。やがて、アーリン夫人の別荘に入るロバートが何
度か目撃され、2人の不倫が囁かれるようになります。但しメグの前では、一同に
口をつぐむのでした。
純情可憐な若妻で人をまっすぐに信じるタイプのメグは、夫ロバートにもひたむ
きな愛を捧げていました。そんなメグに、プレイボーイのジョン・ダーリントン
卿が近づきます。ロバートとは以前からの知り合いでしたが、メグとはアマル
フィで初めて会ったのです。ジョンはすぐさまメグの虜になり、アプローチを開
始します。メグは戸惑いを感じつつも、彼の下心にまでは気づかないのでした。
ロバートがアーリン夫人に小切手を渡していることを知ったジョンは、メグを奪
うチャンスが来たと感じます。
オペラを観に行った日、アーリン夫人が色仕掛けで男性を誘惑する悪女だという
噂をメグも耳にします。話がエスカレートしたとき、ロバートはついアーリン夫
人をかばってしまいます。仮にも妻の母親が侮辱されたのですから。しかしその
行為で、メグは夫に不信感を抱きます。
翌日、メグはジョンから、ロバートの小切手帳を見るよう言われます。『人には
別の顔がある。友達が必要なら僕がいるよ』という含みのある言葉と共に。
何のことかわからないまま小切手帳を開いたメグは、夫がアーリン夫人に数回に
わたりお金を渡していたことを知ってしまいます。夫に裏切られこと、自分だけ
が知らなかったことのダブルパンチで、メグのプライドはズタズタになります。
その夜、メグたちが滞在する別荘で、メグの誕生日パーティが盛大に開かれま
す。泣き疲れたメグは、動揺と混乱のうちに1着のドレスをまといます。それは、
以前アーリン夫人が洋服屋で試着していたのと同じデザインのもの。肌の露出が
多く挑発的な印象を与えるドレスで、今日のパーティに似つかわしくないのはわ
かっていました。それでも夫の愛人に負けたくない。自分の方が魅力的だと知ら
しめたい・・・
メグの姿を見て、誰もが口をつぐみます。あわててメグを部屋の隅に連れて行く
ロバート。メグは『イタリアの流行をお友達に習ってないの?』と挑戦的な言葉
と共に、小切手帳を見たことを告げるのでした。ロバートは絶句します。
パーティーが進む中、ジョンはメグに接近します。彼女の美しさを讃えながら、
ジョンはメグの唇にキスをします。『ひと目で君に恋した。偽りの結婚を続ける
か、正直に生きるか』と、冷静な判断力を持てないメグに駆け落ちを促す言葉を
囁くのでした。
一方アーリン夫人は、ジョンが真剣にメグに恋していることを知ってしまいま
す。メグを心配し2Fの寝室を訪ねると、そこに彼女の姿はなく置手紙だけがあり
ました。それはロバートに宛てたもので、『私たちの結婚は完璧でずっと続くと
思ってた。アーリン夫人との愛を貫いて』という文面でした。アーリン夫人はが
く然とします。
そのとき、ドアの外にロバートがやって来ます。鍵をかけてメグのフリをする
アーリン夫人。ロバートはドア越しに、アーリン夫人とは何でもなく、お金を
払ったのもやむをえなかったからだと語ります。『もうウソはつかない。心の中
には君しかいない』その言葉を聞いたアーリン夫人は、彼がいかに誠実な男性で
あるかを知ります。そして、彼になら娘を任せて間違いないと確信するのです。
同時に、アーリン夫人は焦燥感を覚えます。自分のせいで、メグは駆け落ちを決
意してしまったのです。娘の成長をそばで見届けることなく、人に後ろ指さされ
る暮らしを続けるしかなかった自分。同じ末路を娘に味あわせてはならない。ロ
バートとの結婚生活を続けることこそ、メグが幸せになれる道・・・
その頃、メグはジョンの所有するヨットの中にいました。しばらくしてメグの前
に現れたのは、ジョンではなくアーリン夫人でした。敵意をむき出しにするメグ
に対して、アーリン夫人がかけた言葉とは・・・そして娘の幸せを守るため、
アーリン夫人がとった行動とは・・・
愛を知りすぎた女性と、1つの愛しか知らない女性。どちらが幸せになれるかは、
一概に言えません。ただ、人間誰もが持っている迷いや弱さを克服して獲得した
愛は、本物といえるような気がします。メグとアーリン夫人、2人の今後の幸せを
願いましょう。
*『 』は実際のセリフです。
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4. ヒロインのセリフから
★駆け落ちを決意してジョンのヨットで待っているメグに、母として人生の先輩
として、アーリン夫人が言葉をかけます。以下はその一部です。
A marriage takes you a whole heart. You can succeed whether the rest of
us fails. Don't believe me. Believe him. He's been faithful to you.
I swear it on my life.
「結婚は誠意を尽くすことよ。人がどうあれ、あなたならうまくやっていける。
彼を信じなさい。誠実な夫だわ。誓ってもいい」
◎メグを誠実に愛するロバートなら必ず幸せにしてくれる。そう確信したからこ
そ言えるセリフなのでしょう。娘の幸せを願う母の心があふれています。
★【理想の女(ひと)】で話をややこしくしているのは、ゴシップ好きの御婦人
たちです。そのリーダー格がメグの後見人を気取る伯爵夫人(悪い人ではなさそ
うなのですが)。ロバートに浮気されたと思い込み落ち込むメグを励ますときの
彼女のセリフがフルっています。
Every man is born truthful and every man dies a liar. Crying is the
refuge of plain women. Pretty women go shopping.
「男って生まれたときは誠実なのに、死ぬときはうそつきになるものなのよ。
涙は醜い女の逃げ道よ。美人は、さあ買い物へ」
◎浮気されても騒ぎ立てせず、買い物で鬱憤を晴らすのがセレブ流なのでしょう
か。この後メグは本当に、洋服の“大人買い”をします。
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5. 裏話
【理想の女(ひと)】は、南イタリアのアマルフィを舞台にしています。ローマ
やナポリなどに比べると、日本人にはほとんど知られていない町かもしれませ
ん。
アマルフィの名の由来は、ギリシア神話の英雄ヘラクレスが愛した妖精の名前で
す。突然亡くなってしまった妖精を、地球上で一番美しい場所に葬ろうと考えた
ヘラクレスが選んだのが、この地でした。海に彼女の体を沈め町を作り、アマル
フィと名付けたと言われています。
陽光降り注ぎ冬でも温暖なアマルフィには、世界屈指の海岸線があります。欧米
人のリゾートとして注目されるようになったのは、18世紀頃からです。
ギリシア神話といえば、本作にはセイレーンも登場します。セイレーンは、上半
身が女性、下半身が鳥の姿をした海の怪物で、美しい歌声で船乗りの心を惑わせ
船を座礁させたと言われています。1体ではなく3体いた、下半身が鳥ではなく魚
だったなど、神話にも諸説あるようです。
作品の中ではアーリン夫人が、アマルフィはセイレーン伝説のある町だと言い、
自分をセイレーンにたとえながら、熱心なタピィのアタックをかわそうとしま
す。美しい海岸の夜景をバックに知的な大人の会話が楽しめる、シャレたシーン
となっています。
ストーリーの展開とともに堪能できるアマルフィの魅力。ぜひ目の保養をしてみ
てください。
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いかがでしたか? この週末、ぜひ【理想の女(ひと)】を観てくださいね。
誠に申し訳ありませんが、来週は都合によりお休みさせていただきます。
次回の配送は、7月20日を予定しています。
どうぞお楽しみに。
※なお、「メルマガ天国」は今月31日をもって終了されることになりました。
読者のみなさまには大変ご迷惑をおかけします。
『スクリーンに見つけた恋愛風景』は、他のメルマガ発行サービスにおいても発
行しております。引き続きご愛読いただけると幸いです。
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お手数おかけしますが、上記のいずれかに登録していただけますよう、
よろしくお願いいたします。
◇◆ バックナンバー ◆◇
※今号の中に登場したメルマガです。
第11号 〜待てなかった愛〜【キャスト・アウェイ】 2007.11.21発行
第45号 〜真実の恋はいずこ〜【恋におちたシェイクスピア】 2008.3.23発行
◇◆ 今回紹介の映画 ◆◇
※商品の金額は、メルマガ発行日現在のものです。後日変更になる場合がありま
すのでご了承ください。
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理想の女(ひと)
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